2017年04月30日

外食業界における人事労務政策の現状

 外食業界では,人材不足だけでなく,労務管理に関わるコスト増が深刻な問題になってきています。労働基準監督署からは残業の割増賃金の算定について指導され,年金機構からはP/Aの社保加入対象者を指摘され,ダブルパンチでコスト増になっています。この1ヶ月の紙面では,マクドナルドの地域を巻き込んだ採用方法や求人CMの全国放送,ゼンショーHDやCoCo壱番屋のインターバル制導など,労働環境に関する記事が目立ちました。

 厚生労働省の2月度勤労統計調査では,飲食業は前年比2.5%減の11万4283円であり,調査対象16業種の中で2番目の減少率となりました。昨今の首都圏市場では,飲食業のパート,アルバイト時給は1,000円を超えなければ採用につながらないという感覚があるので,飲食業界の給与水準は上がっているのではないか,と思うところです。それにも関わらず給与が減少した背景には,ブラック問題の影響で正社員の残業時間が減る傾向にあり手取りが減少しているのに加え,パート,アルバイトの雇用が伸びているため全体として給与水準の低下となって顕れたのではないかと推察されます。

 ところで,従業員のキャリアパスとして,のれん分けを使った社員独立制度を検討しているチェーンが増えています。日経MJでは,「かぶら屋」ですでにのれん分け型社員独立制度を導入しているフーデックスHD(東京都池袋)が,ラーメン店「屯ちん」でも同様の制度を導入すると紹介していました。のれん分け型独立支援制度には様々なパターンがありますが,フーデックスHDは直営店を譲渡する形でののれん分けが中心となるようです。のれん分けでは,賃貸借契約の名義書き換え,業務委託型にするのかどうか,独立者への資金援助をするのか,スタッフを転籍させるのか,人材派遣の認可を取るのか,租税回避となるのはどのような場合か,など,個別具体的な事案を検討して制度設計を行う必要があります。CoCo壱番屋やかぶら屋など,先行するチェーンが成功事例を積み重ねて,業界スタンダードとして浸透していくことを期待したいところです。

 厚生労働省の雇用動向調査によれば,飲食業は離職率が高い業種であることが分かります。また,ラーメンチェーンの(株)ムジャキフーズが2014年に行ったインターネット調査では,飲食業界に勤める人の半数近くが独立を考えているという結果となりました。採用,キャリアパス,独立支援といった,人事労務施策をどう構築していくのか,これからの飲食チェーンの大きな課題となりそうです。

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出所:平成26年度 厚生労働省雇用動向調査

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出所:首都圏の飲食店勤務者に対する意識調査、(株)ムジャキフーズ

●飲食業界給与は前年比2.5%減,16業種の中で2番目の減少率(日経MJ:2017/4/17:P11)
●ラーメンの「屯ちん」,のれん分け型社員独立制度を導入(日経MJ:2017/4/14:P15)
●CoCo壱番屋 定時間の休息を儲けるインターバル制を導入(日経MJ:2017/4/14:P15)
●マクドナルド、しごと体験に汗 初の求人CMを全国放送 (日経MJ:2017/3/27:15P)
●マクドナルド,地域との交流深め,今春のP/A採用につなげる(日経MJ:2017/3/13:15P)
●「すき家」のゼンショーHD,グループでインターバル制11時間へ(日経MJ:2017/3/15:15P)


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posted by 山岡雄己 at 00:00| Comment(0) | 時評