2018年03月31日

好調な「肉」業態のトレンドは続くのか?

 日本人の食習慣は変わってしまったのかと思うくらいに,肉業態が好調です。外食企業の2018年2月度売上高(日本フードサービス協会発表)の前年同月比は,ファーストフード4.5%増,ファミリーレストラン2.2%増,中華料理5.6%増,パブ・居酒屋3.4%減に較べて,焼肉業態は9.5%増となり15カ月連続で前年を上回りました(日経MJ:2018/3/28:P13)。焼肉だけではない肉業態のトレンドを,2月のニュースからピックアップしてみました。

 焼肉「牛繁」を展開する牛繁ドリームシステム(東京・新宿)は,「ニクバルダカラ」を運営するAJドリームクリエイト(名古屋市)と提携し,「肉バル」業態に参入します。「ニクバルダカラ」は若い女性や会社員をターゲットとした肉とワインを提供する洋風バルで,同社は首都圏での積極出店を企図しています(日経MJ:2018/3/21:P11)。ラーメンチェーンの「ハチバン」(金沢市)は,「ペッパーランチ」にFC加盟し,外食ステーキ市場に参入します。同時に同社は「ペッパーランチ」の持つ海外展開ノウハウを自社戦略に活かすとしています(日経MJ:2018/3/30:P15)

牛肉だけではなく豚肉業態も動きが活発です。「牛タンねぎし」のねぎしフードサービス(東京・新宿)は,2017年12月に開店した豚肉料理店「ポークポークポークねぎポ」が堅調,多店舗展開を始めます。背景には牛タンの原料価格高騰があり,リスク分散のための新業態開発といえるでしょう(日経MJ:2018/3/23:P15)。リンガーハットはフードコート向けの低価格とんかつ店「とんかつ大学」の多店舗化を計画しています。同社は客単価1,500円程度のとんかつ店「浜勝」を展開していますが,アークランドの「かつや」や松屋フーズの「松のや」などの低価格とんかつ店に顧客が流れていると分析し,今回の低価格とんかつ店の開発となった模様です(日経MJ:2018/3/30:P15)。

 その他,3月のニュースで筆者が注目したのは,UCCの「珈琲館」売却でした。同社は自社ブランド「上島珈琲館」に経営資源を集中する方針で,「珈琲館」チェーンを外資ファンドのロングリーチグループに譲渡する旨の合意が成立しました。2008年にUCCグループに入った「珈琲館」は全国に約300店,コーヒー価格500円弱と競合に対してやや高めの業態です。チェーンの大半がFCオーナーでUCCの傘下になる以前からの加盟者も多く,高齢化や事業承継も気になるところです。また,コーヒー業界はコンビニカフェや郊外型コーヒー店の伸長などで競争は激化しています。ロングリーチグループはウェンディーズやファーストキッチンの経営立て直しをしたことでも有名であり,その手腕に興味をひかれます(日経朝刊:2018/3/8:P16)。

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2018年02月28日

飲食フランチャイズに関する3つの論点

 日本で最大のフランチャイズ関連イベントである,日経新聞社主催「フランチャイズ・ショー2018」が2018年1月31日〜2月2日の3日間開催されました。今月は,フランチャイズ・ショーを振り返りながら新聞紙上でのトピックを絡め,3つの論点で飲食フランチャイズを考えて見たいと思います。

【論点1】個人事業主のフランチャイズ加盟
 今回のフランチャイズ・ショーの飲食関連出展社の中で,筆者が注目したのは「やきとり大吉」のフランチャイズ本部である「ダイキチシステム」です。ダイキチシステムは,「やきとり大吉」を全国に700店舗をチェーン展開する創業40周年の老舗本部ですが,驚くべくことにフランチャイズ・ショーは初出展でした。高収益につき2年で回収などと謳う本部が多い中で,ダイキチシステムは「夫婦でやって月150万円,20万円で生活して30万円貯金する」というようなことをパンフレットに記載しています。
 加盟希望者が個人事業主の場合,自己資本および借入により用意できる金額は1,500万円程度であり,そうなると店舗面積は10坪程度,月商は150〜200万円程度,事業主の手取りは50〜80万円程度,となるでしょう。ダイキチシステムのように現実をありのままに伝えることが加盟希望者に受けるのかどうかは別として,業歴の浅いフランチャイズ本部が欺瞞的勧誘により係争となるケースも散見される中,ダイキチシステムの誠実な姿勢は逆に新鮮に映りました。


【論点2】装置産業としての飲食業からの脱却
 飲食業の流行廃りは以前にも増して速くなってきており,3年程度で業態が陳腐化する恐れもあります。そういう意味では投資回収は3年程度が望ましいものの,飲食業は初期投資が重く投資回収期間の短縮はそう簡単なものではありません。今回のフランチャイズ・ショーでは,装置産業としてのイートイン型業態ではなく,小売型あるいはサービス型の飲食関連業態の出展が増えていたように感じました。
 業歴の長い本部では,JASDAQ上場企業でありポポラマーマなどの飲食店を展開する「ジェーシー・コムサ」が,小売型の「おめで鯛焼き本舗」のブースを出していました。ジェイシー・コムサはミツウロコHDと提携して,中京地区で展開している地域型コンビに「ミツウロコグローサリー」のレジ周りでも「おめで鯛焼き」を販売する予定です(日経MJ:2018/2/7:P13)。その他,移動販売型のメロンパンや,屋外バーベキューセットのレンタルサービスなど,初期投資があまり高額ではない参入障壁の低い業態の初出展も見られました。


【論点3】フランチャイズによる成長戦略の功罪
 ハンバーガー業界は競争激化,各社積極的出店の構えであるとの記事が掲載されました(日経朝刊:2018/2/8:P17)。マクドナルドは業績急回復でこれから3年に200店程度の大量出店を計画ということです(日経MJ:2018/2/16:P15)。
 ここのところマクドナルド業績回復の記事が目立ちますが,その前に前原田社長が推進したフランチャイズ化の影響を分析しなくてはなりません。直営店のフランチャイズ転換により,それ以降の売上は計上されなくなるものの,その時点で「のれん代」などの売却益が生じます。積極的にフランチャイズ化を進めることで暫時的に売却益が積上がりますが,フランチャイズ化が一巡すればそこから売上が一気に下がることになります。カサノバ社長はこの時点でトップを引き継ぎ,運悪く食品偽装問題も絡んで業績低下の悪循環に陥ったのです。そしてこのような悪いスパイラルに入った際に,他人資本によるフランチャイズ・チェーンは,同一資本のゼネラル・チェーンに較べて環境変化への対応が遅くなりがちであることにも留意しなければなりません。
 牛丼業界の競争も熾烈ですが,直営チェーンであるゼンショーの「すき家」と,フランチャイズ店が多かった「吉野家」では,価格政策などの経営のスピード感が違いました。それもあって今から10年ほど前に,吉野家は地方のフランチャイズ店を直営店に買い戻すような動きを見せたこともありました。
 このように,業績が上向きな時はフランチャイズによりチェーン展開のスピードアップが図れるというメリットがある一方,業績が下がり始めるとフランチャイズ・チェーンは対応が遅れて負のスパイラルが加速する,ということも理解しておかなければなりません。


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2018年01月31日

2018年注目の新業態を占う

 2018年,外食業界にとっては労務問題,値上問題が喫緊の課題であると言っても過言ではないでしょう。とはいうものの,後ろ向きな話題ではなく1月は新春に相応しく,これまでの業界トレンドを踏まえて本年度注目される新業態を占ってみたいと思います。

 昨今は肉ブーム。昨年末は幸楽苑HDが「いきなり!ステーキ」にFC加盟し話題となりました。ペッパーフードサービスは2018年,「いきなり!ステーキ」のロードサイド型店舗を140店出店し,国内出店数は合わせて前年比3倍の200店としています(日経MJ:2018/1/22:P13)。柿安本店は,2017年4月から中京地区を中心に展開してきた「柿安Meat Express」を関東に初出店します。「柿安Meat Express」は10坪程度で出店できるフードコート型店舗で,1,000円以下で食べられる「牛しぐれ丼」や「ローストビーフ丼」が人気の新業態です(日経MJ:2018/1/31:P13)。ドトール・日レスHDは,好調な肉業態「腰塚」の百貨店や商業施設内の出店を加速させます。同社の大林会長は「黒毛和牛は消費者に味の違いを訴えやすく、多少高くても売れる。高齢化が進む中、少量で高級でもおいしいものを求めるシニア世代も今後は増えるだろう」とコメントしています(日経MJ:2018/1/10:P13)。

 また,食主体,シンプルオペレーション,低価格の業態も元気です。アスラポート・ダイニングは,スタッフひとりで運営できる(いわゆるワンオペ)セルフサービス式のラーメン店「辛味噌麺かのと」の展開を始めます。同社は同業態を,2018年には都内を中心に10店舗まで出店する予定です(日経MJ:2018/1/15:P13)。すかいらーくは,既存のバーミヤンよりも小規模で値ごろ感のある「ばーみやん軒」を用賀駅前に出店しました。フードメニューは基本的にバーミヤンと同じですが,餃子やラーメンなどの低価格なメニューを中心にラインナップし,値ごろ感を演出しています(日経MJ:2018/1/31:P13)。居酒屋を中心に120店舗を展開するファイブグループは,スパゲッティナポリタン専門店「パンチョ」の出店を加速します。2018年は6店舗程度出店,その後は10店舗程度出店していく計画です(日経MJ:2018/1/10:P13)。

 そして,業態開発のもうひとつのキーワードは「機動力」。デリバリーシステムまではいかないまでも,いかにテイクアウト需要を獲得するかが利益率を左右すると,筆者は考えています。鶏唐揚げ,豚かつ,天ぷらなど,テイクアウトが効く揚げ物業態は店舗数が伸びています。和食店をチェーン展開する長野の王滝が寿司店を改装して豚かつ業態を開店します(日経MJ:2018/1/15:P13)。串カツ田中は,関東圏から地方にも出店エリアを拡げ,2018年11月期の新店を55店(前年比140%)程度と見込んでいます(日経MJ:2018/1/29:P15)。

 「肉,シンプルオペレーション,機動力」この3つのキーワードで,2018年の業態トレンドをウォッチしていきたいと思っています。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 15:04| Comment(0) | 時評