2018年10月31日

フルサービス型喫茶店のリバイバル

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 ここ最近,コメダ珈琲店に代表される「フルサービス型喫茶店」の情報をよく目にします。コメダHDの2018年3〜8月(2019年2月期の半期)の連結決算では,純利益24億円(前年同期比6%増),売上収益は148億円(同14%増)で,いずれも過去最高でした。新業態も含めたコメダHDのチェーン店舗数は831店で,大半をFC加盟店が占めています(日経朝刊:2018/10/11:P15)。
 一方,ドトール・日レスHDの「星乃珈琲店」は全203店が直営店で,2018年3〜8月の売上高は79億円にまで成長しています。これは,同社主力ブランドである「ドトール」の80億円に並びます。ちなみに,ドトールは全1122店のうちの83%がFC加盟店となっています(日経MJ:2018/10/22:P13)。また同社は,星乃珈琲店よりもさらに高級路線の「神乃珈琲店」の業態開発を始めており,銀座に続いて京都に2店舗目を出店しました(日経MJ:2018/10/17:P13)。古民家のような落ち着いた店内で,一杯ずつサイフォンで淹れたこだわり珈琲をゆったりと楽しんでもらう,古き良き日本の純喫茶を思わせるコンセプトになっています。
 その他,すかいらーくは「むさしの森珈琲店」を2019年中に50店舗まで増やす予定,すかいらーく創業者の横川竟氏は「高倉町珈琲店」をFC方式で店舗展開する方針,キーコーヒーも銀座ルノアールと提携して「ミヤマ珈琲」をFC方式で増やしていく計画と,「フルサービス型喫茶店」のブランドは乱立気味の気もしないではありません。

 もともと,団塊の世代は煙草を吸いながらゆっくりコーヒーが飲める喫茶店に馴染んでいましたが,1980年代にセルフ式で低価格のドトールが登場,バブル期でゆっくりしている暇もないビジネスマンにそのスタイルが支持されました。そして1996年にシアトル型の「スターバックス」が日本上陸し,セルフ式でありながらゆったりと時間を過ごせるサードプレイス(スターバックスのコンセプト)としてのカフェが増えてきました。そして今,団塊の世代がシニア層となって,昔懐かしい「フルサービス型」を求めているのではないか,と分析するむきもあります。

 富士経済の統計によると,喫茶店の市場規模はおよそ1兆4000億円程度とされています。その中でドトール型低価格業態が1000億円,スターバックスのようなシアトル型セルフ式コーヒーショップが3000億円,コメダのようなフルサービス型喫茶店で全国規模のチェーンは1000億円程度で現在伸長中,と推測されます。その他のプレイヤーとしては,UCCがファンドに売却した「珈琲館」チェーン(店舗数約300店)のようなコーヒー専門店,サンマルクカフェのようなベーカリーカフェなどがあり,最近ではコンビニカフェも競合として捉えることができるでしょう。マーケットとしては伸長している喫茶店・コーヒーショップ市場ではありますが,業態やブランドの主役が入れ替わることも,大いにありそうです。少子高齢化でシニア世代の活躍が待望される時代,果たしでどの業態・ブランドが生き残るのか,これからの「フルサービス型喫茶店」の動向から目が離せません。

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posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評

2018年09月30日

平成も30年,外食業界ひと昔

 日経新聞9月の「私の履歴書」は,すかいらーく創業者の横川竟氏でした。昭和から平成にかけて外食業界を牽引した「すかいらーく」の光陰を,横川竟氏が生の声で語ったよい記事だったと思います。
 僕たちは上場した頃から道を誤った。いい店である前に,「優良企業」になってしまった。会社というのは大きくなると壊れる。だからある時点でいったん足を止めないといけない。外食人生約50年。「経営って難しい」というのが率直な感想だ。(中略)僕が話すことはいつも同じだ。「きれいな店,おいしい料理,親切な接客でお客様の心が安まるお手伝いをしたい」。しっかり育った店長の数の分だけ出店したい(日経朝刊:2018/9/29:38P,私の履歴書「横川竟」最終回より)。

 同じ時期に,日経新聞で「1989年からの視点」という5回連載の記事が掲載されていました。私事で恐縮ですが,筆者は新卒で就職したのが1988年,あれから30年経ったわけです。最終回では,2018年サラリーマンお小遣い調査(新生銀行調べ)によると,男性会社員の昼食代は平均570円で1992年の746円と較べても寂しい限り,と締めくくられていました。バブル期のサラリーマンが高級クラブの接待にあけくれていたこと思うと,週3回の牛丼並盛とコンビニ弁当のお昼は,何とも悲哀を感じさせずにはいられません(日経朝刊:2018/9/28:38P)。

 そんな悲哀の象徴ともされている「牛丼」,吉野家はブランドイメージを刷新するあの手この手を打ってきています。40〜50代の男性がメインターゲットの吉野家ですが,女性や若者といった新たな客層を取り込むべく,通常の牛丼(並390円)より高めの「明太マヨ唐揚丼(並590円)」などをラインアップし,黒を基調としてカフェ風に環境設計された実験店舗を出店しています。この通称「黒い吉野家」は吉野家1600店のうち20店程度ですが,メソッドを確立させて全体の半分程度に広げていく戦略を打ち出しています(日経朝刊:2018/9/26:17P)。
 また吉野家は,牛皿(牛丼の具)とビールなどの酒類とで居酒屋需要を取り込む「吉呑み」を展開する店舗の一部で,ワインの提供を始めました。さらに「仕事帰りに軽く一杯」需要を取り込もうという試みです。吉野家が「吉呑み」を始めたのは2013年,一時は1000店超まで広がったものの,郊外店舗は車での来客が多いことなどから一部を見直し,現在「吉呑み」実施店舗は都心中心で275店となっています(日経MJ:2018/9/21:13P)。

 ところで,JFA(日本フランチャイズチェーン協会)からは,9月19日にフランチャイズ統計調査(対象期間:2017年3月〜2018年3月)が発表されました。外食業のカテゴリー別売上高は,ハンバーガーはマクドナルドの業績回復により前年比8.7%増,日本料理・寿司はインバウンドの根強い人気により前年比1.0%増,コーヒーショップはフードメニューの充実や上質な環境設計が奏功して前年比1.4%増,居酒屋パプは専門業態の伸長や新メニュー開発により女性やファミリー層を取り込んで前年比1.1%増,としています。ただし,JFA統計はチェーン展開をしている外食企業を中心にしており,業態カテゴリーの姿をそのまま映しているわけではない,と筆者は考えています。
 例えば居酒屋は,串カツや焼鳥などの単品専門型居酒屋チェーンが活況,総合型居酒屋チェーンはブランドリニューアルなどを行いなんとか水準維持。しかしながら統計から漏れている多くの個人店や中小チェーンは低価格化やアルコール離れから苦戦を強いられており,居酒屋カテゴリー自体のマーケットの縮小傾向は続いている,と見ています。以下に筆者が独自に作成した,2017年の主な業態カテゴリー別バブルチャート(市場成長率,市場規模,市場占有状況)を掲載しておきます。参考になれば幸甚です。

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posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評

2018年08月31日

「泣きのニッパチ」外食チェーンあの手この手

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 外食業界では業態により多少の差異はあるものの,売上の季節変動を見るに,好調なのは3月末から4月半ばにかけてのお花見シーズン,年末の忘年会シーズンの2ピークといえるでしょう。逆に昔から「泣きのニッパチ」と言われるくらい,2月と8月は集客の厳しい月となっています。最近では,連休の多い9月も集客が振るわない店舗が多いように感じます。
 もちろん,比較的夏枯れしない焼肉業態や連休に強いリゾート地にある店舗など,それぞれに個別の要因がありますが,概ねこのような傾向にあると見てよいでしょう。
 さて今月は,その「ニッパチ」の8月に外食チェーン各社がどんな販促やマーケティングを行っていたのか,新聞紙上等で目についたものをピックアップしてみました。

 吉野家,ガスト,モスバーガー,KFC,松屋の5ブランドが集結した「ニクレンジャー」なる企画が注目されました(日経MJ:2018/8/29:1P)。もともと吉野家発のこの企画は,新聞紙上で取り上げられる前からTwitter上で話題となっており,8月のコミケではコスプレが登場して盛り上がりを見せるなど,SNSが顧客のシンパシーを高める図式が見えた現象でした。同日の日経MJ同面には,企業のTwitter担当者の座談会が掲載されており,企業のコミュニケーション戦略の潮流を再認識させられました。
 Twitter企画が奏功したのを好材料と見たのか,吉野家HD傘下の「吉野家」と「はなまるうどん」とすかいらーく傘下の「ガスト」は,合同販促キャンペーンを行うことになりました(日経MJ:2018/8/27:13P)。このキャンペーンは,3ブランド共通の「合同定期券」を購入すると1か月間,どの店舗でも割引が受けられるというもの。両社は,客層の異なる3つのブランドが相互に送客することによる新規顧客開拓を期待しています。まさに「呉越同舟」ですね。

 他方,フラチャイズ加盟開発マーケティングということでいえば,「牛角」のレインズ創始者である西山知義氏が代表をされているダイニングイノベーションの記事が目に留まりました(日経MJ:2018/8/31:15P)。新橋に直営1店舗目を開業させた「焼肉ライク」は,カウンターにひとり用の無煙ロースターが設置された焼肉業態で,気軽にひとりで焼肉を食べられるのが特徴です。ここのところ高単価の「ひとり焼肉」業態は注目されていることや,お客様が自分で焼くことで提供時間を早くできるということなど,業態としての将来性は感じるところではあります。
 筆者が注目したのは,10段1/3の取材記事の同面に,5段1/2の西山氏のセミナー告知が掲載されていたことです。企業経営者限定30名のセミナーを全国で4回行うというもの。これは記事連動型広告ともいえるもので,法人のフランチャイズ加盟開発のマーケティングですね。まさに「牛角」が急拡大していったときのベンチャー・リンク社の手法のような印象を受けました。
 西山氏は,フランチャイズ方式をとり,2019年末までに30店,2013年までに300店舗のチェーンに育てる,と方針を語っています。現在,焼鳥「すみれ」を126店舗展開させている西山氏の手腕からして,不可能な数字ではないのかもしれません。夢よもう一度,「焼肉ライク」がこれからどのように発展していくのか,刮目しておきたいと思います。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評