2019年02月28日

人手不足の外食業界における24時間営業のゆくえ

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 「2月は逃げる」よろしく,あっという間の1ヶ月でした。フランチャイズ業界ではコンビニの24時間営業の是非が話題となりましたが,働き手不足で苦労する外食業界においても,年中無休や深夜営業を止めるチェーンが出始めています。
 ところで,2月の日経新聞に「ニューエコノミー」という特集連載があり,その中でモノの生産と付加価値創造を基準とした資本主義経済が瓦解し,情報と時間が価値を持つ新しい経済が始まっている,ということが述べられていました。お金を稼ぐことよりも有意義な時間を過ごすことに価値を置くという,働き方のパラダイムシフトが起こっていることを環境変化として受け入れなければ,外食チェーンも生き残ってはいけないでしょう。

 競争が激しく人件費上昇を価格に転嫁できない外食業界は利益が圧迫されています。「未曽有の人手不足」と嘆く吉野家は18年3〜11月期の営業損益が赤字に転落。すかいらーくやリンガーハットも人件費の増加が響いて2018年度の業績予想を下方修正しています(日経朝刊:2019/2/17:P7)。
 そのような厳しい流れの中,木曽路はGW明けの5月7,8日の2日間を一斉休業するそうです。今年は皇位継承に伴う10連休が5月6日まで続き各店での混雑が予想されており,繁忙期にスタッフのシフトを厚めにして一斉休業によりスタッフの休暇取得を推進する方針です(日経MJ:2019/2/25:P13)。
 営業時間の見直しで先行するロイヤルHDは,220店あるロイヤルホストの時短営業を進め,24時間営業の店は2017年でなくなりました(日経朝刊:2019/2/28:P19)。営業時間を大きく変更していない吉野家などの収益が悪化していることを見ると,時短営業や一斉休業への取り組みは不可避なのではないかと思います。

 その他,2月の新聞紙上で気になった記事は次の通りです。ロングリーチの傘下となった「珈琲館」の業態再構築が始まります。禁煙店舗を増やし店舗環境を改善して居心地の良さを打ち出す方針のようです。2019年に20店舗を新規出店する方針です(日経MJ:2019/2/6:P13)。クリレスHDは「銀座木屋」などを運営する木屋フーズを買収しうどん・そば業態を強化する考え(日経MJ:2019/2/4:P13),フジオフードシステムは沖縄のステーキレストランを8店舗展開する「サムズグループ」を27億円で買収(日経MJ:2019/2/27:P15),肉汁餃子のダンダンダン酒場を運営するナッティースワンキー(年商29億円,2018年6月期)が3月28日に東証マザーズに上場(日経MJ:2019/2/27:P15),ペッパーフードサービスは「いきなり!ステーキ」のNY進出が不首尾に終わり25億円の損失を計上して2018年12月期の連結決算で最終利益が1億円の赤字となった(日経朝刊:2019/2/15:P21),といったところでしょうか。

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posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評

2019年01月31日

2019年外食チェーントップ,年頭に語る

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 2018年後半から年末にかけて,外食業界の業況は振るわなかったようです。2018年3~11月期の決算では,吉野家HD,ドトール日レスHD,クリレスHD,ダイヤモンドダイニングHD,壱番屋,リンガーハット,ハイディ日高などは,営業利益が赤字または減益となりました。人材不足と立地飽和により出店ペースが鈍化しており,また材料費や人件費の高騰が高コスト構造を助長しています(日経MJ:2019/1/16:P15)。
 また,2018年12月の売上は,外食主要34社中20社が既存店ベースで前年同月を下回りました。ファミレスは5社のうち3社が減収,居酒屋は6社のうち5社が前年実績を下回りました。一方ファストフードは,6社中4社が増収と好調,ラーメン・カレー・定食の「食主体」チェーンは7社中3社が増収でした。
 個別企業の記事では,あみやき亭の2018年4〜12月の純利益は食肉原材料の高騰等により前年同月比12%減の13億円(日経朝刊:2019/1/8:17P),吉野家の2018年3〜11月期の連結決算は営業曽根喜5億円の赤字で9年ぶりの営業赤字(日経朝刊:2019/1/11:15P),ペッパーフードサービスは18日に既存店12月が同月比で13%減収を発表,9カ月連続で前年水準を下回っており,その影響で株価は効果傾向(日経電子版:2019/1/24),などとなっています。

 以下,日経MJ掲載の「2019トップに聞く」外食関連企業の抜粋です。
スシローグローバルHD 水留浩一社長
国内は成長維持,海外・新業態を加速する。元気寿司との統合によりシェアはトップとなり,業界スタンダードになるだろう。しかしながら,PMIには時間がかかると見込んでいる(日経MJ:2019/1/16:P15)。

ロイヤルHD 黒須康宏社長
消費の二極化が進んでいるので,お客様の使い分けのニーズに沿ったサービスを提供していく。深刻化する人手不足については,機械化と新技術導入による効率化で対応する(日経MJ:2019/1/16:P15)。

スターバックスコーヒージャパン 水口貴文CEO
人手不足の中スタッフをどう戦力化していくか,理念の共有や教育などが重要になる。2月に開店する高級店「リザーブロースタリー」がこれからの20年を牽引する鍵となるだろう(日経MJ:2019/1/14:P13)。

モスフードサービス 中村栄輔社長
事故からの信用回復が最優先。丁寧に真摯に作っているという取り組みを訴求する。プロダクトアウトからマーケットインの発想で商品開発し,ブランドの建て直しに全力を注ぐ(日経MJ:2019/1/14:P13)。

串カツ田中HD 貫啓二社長
禁煙によりファミリー層をとりこみ,次世代を担う子供たちのファンを増やせた。材料高騰はスケールメリットで相殺できる,利益を出すためのブラック化はNG,労働環境改善に力を入れる(日経MJ:2019/1/18:P15)。

鳥貴族 大倉忠司社長
値上げにより落ち込んだ既存店の業績回復を急ぐ。外国人労働者も受け入れ人手不足を解消する。外食は作り立てを食べるのが魅力でありテイクアウトには力を入れない(日経MJ:2019/1/18:P15)。


(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 20:02| Comment(0) | 時評

2018年12月31日

2018年の外食チェーン業界を振り返る

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 先日,今年2018年(平成30年)を表す漢字は「災」と発表されました。地震,豪雨,台風,猛暑などの自然災害により日本各地の社会インフラが麻痺し,多くの人々の生活に支障が出ました。そういった「災」の影響は外食チェーン業界にも無関係ではなく,猛暑から台風の8〜9月は如実に業況が落ち込みました。また人手不足や食材コスト増といった構造的なマイナス要因もあり,外食チェーンを取り巻く環境は一層厳しさを増しています。そのような今年を,筆者なりの3つの論点で振り返ってみました。

総合居酒屋の専門店化
〜陳腐化したブランドのブラッシュアップ〜
 ワタミをはじめとする総合居酒屋チェーンが,既存ブランドのブラッシュアップに取り組んで一定の効果を上げています。ワタミは2018年3月期に,「和民」「坐・和民」56店,「わたみん家」78店を新ブランドの「ミライザカ」「三代目鳥メロ」などに業態転換しました。転換店は前年比20%増で推移しています(日経MJ:2018/5/18:13P)。また,ちょい飲みと持ちかえりの「から揚げの天才」をFC展開の予定で,小規模で機動力の高い新業態の開発にも力を入れています(日経MJ:2018/11/26:19P)。
 若者のアルコール離れやデフレ傾向によって外食市場が縮小する中,いわゆる総合居酒屋はこれといった訴求ポイントに乏しく,より一層厳しい業況にあるといった感がありました。そのような中,JFA(日本フランチャイズチェーン協会)の統計調査によると,2018年3月期の居酒屋市場は,居酒屋チェーンが焼き鳥・海鮮など専門化された新業態開発を進めたことで,売上高が前年比1.1%増,店舗数が前年比2.5%増と3年ぶり増加に転じたとしています。

巨人マクドナルドの復活
〜徹底した現場主義からニーズをつかみデフレ脱却〜
 12月の後半から年末にかけて,日経朝刊の企業面で,「復活マクドナルドの素顔」という特集記事が5回に亘って掲載されました。この記事では,現在進行形の施策なども取材されており,興味深く読むことができました。また,10月頃の日経夕刊には,カサノバCEOの「私のリーダー論」が2回に分けて掲載されていました。現場主義,女性活用,ダイバシティといった視点で語られたインタビュー記事は,今のマクドナルドの復活を考察するに,参考となる記事でした。
 2018年12月期のマクドナルドの業績予想は,売上高2700億円(予比106%,∔10億円),連結営業利益235億円(前年比124%)で,売上高営業利益率は8.7%,過去最高だった2011年12月期の9.3%に迫る勢いです。「月見バーガー」などの期間限定商品,顧客ニーズを捉えた「夜マック」,高級ハンバーガーの「グラン」シリーズなどか奏功したとしています(日経朝刊:2018/11/9:21P)。

総合型喫茶店の盛隆
〜単なる喫茶店ではないシニア向けの洋風ファミレスへ〜
 コメダ珈琲型の総合喫茶店が一定の市場規模を築きつつあります。時間とお金に比較的余裕のある団塊のJr.世代がシニア層となり,ゆったり過ごせる場所を昔懐かしい雰囲気のある総合喫茶店に求めている,との見方もあります。総合喫茶店は単にコーヒーだけでなく,パスタやサンドイッチ,あるいはハヤシライスなどの洋食系のメニューを提供することで,幅広いニーズを獲得しようとしています。
 代表的なブランドの概要としては,「コメダ珈琲店」831店舗(日経朝刊:2018/10/11:P15),ドトール・日レスHD「星乃珈琲店」203店(日経MJ:2018/10/22:P13)となっています。その他,すかいらーくは「むさしの森珈琲店」を2019年中に50店舗まで増やす予定,すかいらーく創業者の横川竟氏は「高倉町珈琲店」をFC方式で店舗展開する方針,キーコーヒーも銀座ルノアールと提携して「ミヤマ珈琲」をFC方式で増やしていくなど,業界は群雄割拠の状況です。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 13:42| Comment(0) | 時評