2018年06月30日

外食チェーン出店戦略と業態づくりの転換点

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 ここ最近の外食チェーンの話題といえば,人手不足や原料高騰などコストプッシュ関連が多いようです。このような外部環境変化に対する外食チェーンの対応は連日新聞紙上を賑わせていますが,各チェーンの特徴などを6月の記事からピックアップして解説します。

 全国1000店舗超のチェーン展開をしている「すかいらーくグループ」や「ゼンショーHD」は,市場飽和や人手不足によって,現在では年間出店ペースを10店程度に抑制しています。パートタイム雇用も含めて飲食調理関連の有効求人倍率は約3.2倍と,95年統計開始以来の高水準となっており,大量出店に必要な人の確保が難しくなってきています(日経朝刊:2018/6/16:2P)。
 昨年度大量閉店や「いきなりステーキ」へのFC加盟が話題となった「幸楽苑HD」は,2019年3月期の新規出店を10店舗程度に抑える方針です。同期に西日本の不採算店17店の閉鎖も予定しており,店舗数は500店程度になる見込みです。同社の新井田社長は前期32億円の最終赤字となった原因を出店戦略の判断ミスとしており,「経営陣一同,抜本的見直しにより事業を再構築する」と説明しています(日経MJ:2018/6/1:13P)。

 規模の経済性すなわち「スケールメリット」享受にも限界があり,何か歯車が狂って負のスパイラルに陥ると加速度的に業績が悪化するのがチェーン・ビジネスの怖さです。また,既存店の売上落ち込みを新規出店でカバーするのが常態化してしまうと,建設費など初期投資の支払期限と現金商売で売上金が入る時期とのタイムラグにより一時的なキャッシュインが生まれてしまい,巨大な「自転車操業」の図式が出来あがることにもなります。昨今のような厳しい経営環境下においては,収益性確保や内部統制確立など,経営の基礎固めをするのが無難といえるのではないでしょうか。

 求人募集情報大手リクルートジョブズの6/14発表によると,首都圏・東海・関西の三大都市圏におけるパートアルバイト募集時平均時給発表,前年同月より1.8%高い1024円でした。同業大手のパーソナルキャリアによれば,5月の全国のパートアルバイト募集時平均時給は,前年同月より3.6%高い1032円でした(日経朝刊:2018/6/15:20P)。
 中国ネット通販国内第2位の京東集団(JDドットコム)は,従業員のいない無人ロボットレストランを展開するそうです。客はスマホで注文,調理・盛付け・配膳をロボットがするのだそうです。ロボットを活用したレストランは,すでにアリババ集団が中国国内で多店化を進めていますが,完全無人という業態は初めてです。2018年8月には,4000uの敷地面積となる第1号店を開店の予定で,今後はFC方式で出店を加速する方針です(日経朝刊:2018/6/1:11P)。

 最近,グルメ回転ずしの雄「銚子丸」(JASDAQ)や,クリエイトレストランHD傘下の「磯丸水産」もオーダー用にタッチパネルを導入するようになりました。これらの業態は,カウンター内の職人との掛け合いや,民芸風ユニフォームを着たホールスタッフとのコミュニケーションが,いわゆる「ノリ」を演出していたと,筆者は個人的に評価しています。人手不足という現状を鑑みるに,背に腹は代えられないところはあるのでしょうが,業態の付加価値を削ぐことにはならないか,少し気がかりなところです。

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posted by 山岡雄己 at 23:00| Comment(0) | 時評

2018年05月31日

日経新聞社2017年度飲食業調査から

 2018年5月23日発行の日経MJに,日経新聞社2017年度飲食業調査が発表されました。今月はこの調査を中心に,外食業界の現状と今後を考察します。

1.禁煙化の流れが進んでいる(日経MJ:2018/5/25:13P)
 ゼンショー傘下のココスは2019年9月までに全面禁煙にすると発表(日経MJ:2018/5/25:13P),先月はモスバーガーや串カツ田中の全店禁煙の記事も掲載されました。2017年2月,厚労省は健康増進法改正案をめぐり受動禁煙を防止するため飲食店の全面禁煙化の方針を打ち出しており,東京オリンピックを控えた東京地区では特に禁煙化の流れが加速しています。

2.メニューの高付加価値化(日経MJ:2018/5/28:13P)
 メニューの高付加価値化とはいうものの,現実は原材料高と人件費増というコストを吸収するために高単価高利益率のメニュー割合を増やさざるを得ない,というのが実情でしょう。その中で,あえて低単価メニューを投入するとした「英国風パブHUB」の記事は目を引きました。フードメニューの8割を500円以下に,また490円のドリンクも増やし,ワインコインで利用できる割安感を演出するとのことです(日経MJ:2018/5/28:13P)。

3.人手不足への対応に追われる(日経MJ:2018/5/30:13P)
 人手不足により出店計画に支障をきたす企業が少なくありません。物件取得の競争や,家賃の高騰などよりも,スタッフが集まらないことが悩みの種のようです。そのような中,スタッフ確保のためのインフラ整備の記事がいくつか掲載されていました。
 パーソナルホールディングス傘下のパーソナルプロセス&テクノロジー社は,外食業などで働くバイトスタッフの給与を前払い(前払い当日までに働いた賃金分)するサービスを始めます。これは,同社が外食企業に代わってスタッフに給与を前払いし,あとで一括して企業側に請求する仕組み。バイトスタッフはスマホを使って1回900円でサービスが利用でき,同種サービスに較べて割安な料金設定となっています(日経MJ:2018/5/28:6P)。
 チャットボットスタートアップのハチドリ(東京・品川)は,バイトシフト管理のスマホアプリを開発しました(日経MJ:2018/5/28:6P)。同種のサービスはリクルート社の「シフオプ」など他社からも出ていますが,IoTによる労務管理は日進月歩のようです。


 その他,5月23日の日経MJトップには,個店主義のバルニバービや,元トレインズ代表西山氏の単品特化型の業態が紹介されていました。筆者が前職(サントリー)の頃,業態開発部の責任者が「立地なんか関係ない,スタッフと業態が良ければ人は呼べる,飲食業はノリ=色気だ」と豪語していたのを思い出しました。居酒屋が苦戦しチェーンオペレーションのあり方が問われている中,チェーンオペレーション・システムの構築を専門とするコンサルタントとしては,業態論をどうとらえるか改めて考えさせられました。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評

2018年04月30日

外食チェーンの人材確保,生産性向上への取り組み

 外食業界では,正規雇用の従業員だけでなくパート・アルバイトも採用難で,現場のオペレーションは厳しい状況です。さらにブラック問題など労働環境への対応も世間から厳しい目を向けられており,残業代や社会保険料などのコスト要因が利益を圧迫する結果となっています。そのような状況の中,外食チェーン企業は政府の唱える「働き方改革」を積極的に推進し多様な労働形態の整備をすることで人材確保に努めているようです。

 ジョイフルは4月から,パート・アルバイトの定着率を高めるため全パート・アルバイトを期間の定めのない無期限雇用に切り替えます。担当者いわく,「雇い止めの不安を無くし安心して働いてもらえる環境にしたい」ということです。また,ドトールコーヒーは,2017年9月に非正規従業員向けの退職金制度を導入しました。ドトール側が毎月100円の掛け金を負担,従業員側は毎月給与の10%以内で積み立てができるというものです。大林会長は,「従業員の方に喜んでもらいたい」と語っています(日経MJ:2018/3/2:13P)。

 サガミチェーンは,出産後の育児休業から復帰した女性社員を対象とした,育児奨励金制度を導入しました。子供が1歳未満だと月額15,000円,1〜2歳未満は10,000円,2〜3歳未満は5,000円が支給されます。近年の新入社員における女性割合は4割程度となっており,今後のために必要な環境整備であるとしています。ブロンコビリーは,営業時間の短縮で社員の負担軽減を図ります。店舗の閉店時間を30分から1時間繰り上げるなどして,短縮営業によるアルバイト確保と,社員の急な出勤などの負担を軽減する狙いです(日経MJ:2018/4/13:13P)。

すかいらーくは,チェーンの3000店を対象に約10万人いるパート・アルバイトが所属とは別の店舗で働ける仕組みを立ち上げるため,ITシステム導入に100億円を投資します。接客マニュアルをグループでほぼ統一し,パート・アルバイトがスマホでマニュアルの動画を見られるようにすることで、早期の戦力化を目指します。従業員にとっては働く場所と時間の選択肢が広がり働きやすくなるので,人材の定着化と効率化が期待されます(日経朝刊:2018/3/25:3P)。
 また同社は,パート・アルバイトへの応募を検討している主婦向けに相談窓口「おしごとコンシェルジュ」を設けました。10万人のパート・アルバイトの3割が主婦であることから,主婦が応募しやすく働きやすい職場環境を整備するのが急務であるとしています(日経MJ:2018/4/6:13P)。

 串カツ田中は,新入社員とトレーナーだけの研修センター店舗を都内にオープンさせました。メニューは同じですが,研修センター店なのでドリンクは216円均一と割安になっています。一カ所での集中研修によりトレーニング効果が向上するだけでなく,同じ時期にトレーニングしたという「同期の絆」ができることが離職率低下につながると期待されています(日経MJ:2018/4/20:13P)。

 飲食店支援のシンクロ・フード(東証1部)は,外国人専用の飲食求人サイトを開設します。留学生のアルバイトだけでなく,就労に制限がない外国人永住者などの正規雇用にも対応したサイトで,人手不足に悩み,またインバウンド対応の外国人スタッフを求めている外食チェーンでの需要を見込んでいます。サイトのサービスはまず英語から始め,順次ベトナム語、中国語、韓国語と対応言語を拡げていく計画です(日経MJ:2018/4/23:13P)。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 22:00| Comment(0) | 時評