2018年12月31日

2018年の外食チェーン業界を振り返る

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 先日,今年2018年(平成30年)を表す漢字は「災」と発表されました。地震,豪雨,台風,猛暑などの自然災害により日本各地の社会インフラが麻痺し,多くの人々の生活に支障が出ました。そういった「災」の影響は外食チェーン業界にも無関係ではなく,猛暑から台風の8〜9月は如実に業況が落ち込みました。また人手不足や食材コスト増といった構造的なマイナス要因もあり,外食チェーンを取り巻く環境は一層厳しさを増しています。そのような今年を,筆者なりの3つの論点で振り返ってみました。

総合居酒屋の専門店化
〜陳腐化したブランドのブラッシュアップ〜
 ワタミをはじめとする総合居酒屋チェーンが,既存ブランドのブラッシュアップに取り組んで一定の効果を上げています。ワタミは2018年3月期に,「和民」「坐・和民」56店,「わたみん家」78店を新ブランドの「ミライザカ」「三代目鳥メロ」などに業態転換しました。転換店は前年比20%増で推移しています(日経MJ:2018/5/18:13P)。また,ちょい飲みと持ちかえりの「から揚げの天才」をFC展開の予定で,小規模で機動力の高い新業態の開発にも力を入れています(日経MJ:2018/11/26:19P)。
 若者のアルコール離れやデフレ傾向によって外食市場が縮小する中,いわゆる総合居酒屋はこれといった訴求ポイントに乏しく,より一層厳しい業況にあるといった感がありました。そのような中,JFA(日本フランチャイズチェーン協会)の統計調査によると,2018年3月期の居酒屋市場は,居酒屋チェーンが焼き鳥・海鮮など専門化された新業態開発を進めたことで,売上高が前年比1.1%増,店舗数が前年比2.5%増と3年ぶり増加に転じたとしています。

巨人マクドナルドの復活
〜徹底した現場主義からニーズをつかみデフレ脱却〜
 12月の後半から年末にかけて,日経朝刊の企業面で,「復活マクドナルドの素顔」という特集記事が5回に亘って掲載されました。この記事では,現在進行形の施策なども取材されており,興味深く読むことができました。また,10月頃の日経夕刊には,カサノバCEOの「私のリーダー論」が2回に分けて掲載されていました。現場主義,女性活用,ダイバシティといった視点で語られたインタビュー記事は,今のマクドナルドの復活を考察するに,参考となる記事でした。
 2018年12月期のマクドナルドの業績予想は,売上高2700億円(予比106%,∔10億円),連結営業利益235億円(前年比124%)で,売上高営業利益率は8.7%,過去最高だった2011年12月期の9.3%に迫る勢いです。「月見バーガー」などの期間限定商品,顧客ニーズを捉えた「夜マック」,高級ハンバーガーの「グラン」シリーズなどか奏功したとしています(日経朝刊:2018/11/9:21P)。

総合型喫茶店の盛隆
〜単なる喫茶店ではないシニア向けの洋風ファミレスへ〜
 コメダ珈琲型の総合喫茶店が一定の市場規模を築きつつあります。時間とお金に比較的余裕のある団塊のJr.世代がシニア層となり,ゆったり過ごせる場所を昔懐かしい雰囲気のある総合喫茶店に求めている,との見方もあります。総合喫茶店は単にコーヒーだけでなく,パスタやサンドイッチ,あるいはハヤシライスなどの洋食系のメニューを提供することで,幅広いニーズを獲得しようとしています。
 代表的なブランドの概要としては,「コメダ珈琲店」831店舗(日経朝刊:2018/10/11:P15),ドトール・日レスHD「星乃珈琲店」203店(日経MJ:2018/10/22:P13)となっています。その他,すかいらーくは「むさしの森珈琲店」を2019年中に50店舗まで増やす予定,すかいらーく創業者の横川竟氏は「高倉町珈琲店」をFC方式で店舗展開する方針,キーコーヒーも銀座ルノアールと提携して「ミヤマ珈琲」をFC方式で増やしていくなど,業界は群雄割拠の状況です。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 13:42| Comment(0) | 時評

2018年11月30日

外食業界におけるIoT技術革新

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 今月の半ばころに出た「週刊ダイヤモンド」は「外食格付け」特集でした。いつものように顧客満足度やその逆などの指数からチェーンの番付がされており,トレンドを見るのに参考になる特集だったと思います。その中で,外食業界におけるIoT導入について3つの切り口が提示されており,すなわち@調理や販売などのオペレーションのロボット化による生産性向上,Aチェーンごとのアプリによる顧客の囲い込み,Bグルメサイトにおけるプレイヤーの興亡,といったところでした。特に,3番目のグルメサイトに関しては,辛辣な批評を含めてサイトごとの特徴を解説しており,なかなか大胆な記事だと感じました。

 そこで,今月の日経関連の記事から吉野家のIoTに関わるものをピックアップしてみました。まずは離れた店舗間をテレビ電話で繋ぐ実験です。店舗内にガラスで仕切られた個室を用意し,インターネットを介してテレビ電話で他店舗の利用客と会話を楽しむ仕掛けです。恵比寿と江坂(大阪)で実験を開始し,新たな利用動機に結び付けたいとしています(日経MJ:2018/11/7:P15)。
 次に神奈川の74店舗で試験導入されたAI(人工知能)によるアルバイト採用面接です。アルバイト希望者はスマホでいつでもどこでも採用にエントリーすることができ,希望者の回答によってAIが次の質問を変える,という仕組みです。面接時間は約5分と短めに設定されており,人手不足の昨今,より積極的にアルバイトを採用する方針です(日経MJ:2018/11/21:P13)。
 そして,オリガミペイを利用したスマホでの電子決済の導入です。吉野家では,すでに8月から交通系電子マネーによる決済を導入しています。他,吉野家プリカ(プリペイドカード)も導入するなど,決済のキャッシュレス化を進め現金をハンドリングするコストを軽減する狙いです(日経MJ:2018/11/28:P13)。
 吉野家は,本年度3〜8月の連結決算で増収となりましたが人件費増が響き8億5千万円の赤字となりました(前年同期は13億円の黒字)。吉野家は外食企業の中でも売上高人件費率が高く,人件費上昇が利益に与えるインパクトは大きくなっています。日本版ファーストフードの先駆けである「はやい,うまい,安い」は,戦略を見直さないといけない時期に来ているのかもしれません(日経朝刊:2018/10/6:11P)。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評

2018年10月31日

フルサービス型喫茶店のリバイバル

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 ここ最近,コメダ珈琲店に代表される「フルサービス型喫茶店」の情報をよく目にします。コメダHDの2018年3〜8月(2019年2月期の半期)の連結決算では,純利益24億円(前年同期比6%増),売上収益は148億円(同14%増)で,いずれも過去最高でした。新業態も含めたコメダHDのチェーン店舗数は831店で,大半をFC加盟店が占めています(日経朝刊:2018/10/11:P15)。
 一方,ドトール・日レスHDの「星乃珈琲店」は全203店が直営店で,2018年3〜8月の売上高は79億円にまで成長しています。これは,同社主力ブランドである「ドトール」の80億円に並びます。ちなみに,ドトールは全1122店のうちの83%がFC加盟店となっています(日経MJ:2018/10/22:P13)。また同社は,星乃珈琲店よりもさらに高級路線の「神乃珈琲店」の業態開発を始めており,銀座に続いて京都に2店舗目を出店しました(日経MJ:2018/10/17:P13)。古民家のような落ち着いた店内で,一杯ずつサイフォンで淹れたこだわり珈琲をゆったりと楽しんでもらう,古き良き日本の純喫茶を思わせるコンセプトになっています。
 その他,すかいらーくは「むさしの森珈琲店」を2019年中に50店舗まで増やす予定,すかいらーく創業者の横川竟氏は「高倉町珈琲店」をFC方式で店舗展開する方針,キーコーヒーも銀座ルノアールと提携して「ミヤマ珈琲」をFC方式で増やしていく計画と,「フルサービス型喫茶店」のブランドは乱立気味の気もしないではありません。

 もともと,団塊の世代は煙草を吸いながらゆっくりコーヒーが飲める喫茶店に馴染んでいましたが,1980年代にセルフ式で低価格のドトールが登場,バブル期でゆっくりしている暇もないビジネスマンにそのスタイルが支持されました。そして1996年にシアトル型の「スターバックス」が日本上陸し,セルフ式でありながらゆったりと時間を過ごせるサードプレイス(スターバックスのコンセプト)としてのカフェが増えてきました。そして今,団塊の世代がシニア層となって,昔懐かしい「フルサービス型」を求めているのではないか,と分析するむきもあります。

 富士経済の統計によると,喫茶店の市場規模はおよそ1兆4000億円程度とされています。その中でドトール型低価格業態が1000億円,スターバックスのようなシアトル型セルフ式コーヒーショップが3000億円,コメダのようなフルサービス型喫茶店で全国規模のチェーンは1000億円程度で現在伸長中,と推測されます。その他のプレイヤーとしては,UCCがファンドに売却した「珈琲館」チェーン(店舗数約300店)のようなコーヒー専門店,サンマルクカフェのようなベーカリーカフェなどがあり,最近ではコンビニカフェも競合として捉えることができるでしょう。マーケットとしては伸長している喫茶店・コーヒーショップ市場ではありますが,業態やブランドの主役が入れ替わることも,大いにありそうです。少子高齢化でシニア世代の活躍が待望される時代,果たしでどの業態・ブランドが生き残るのか,これからの「フルサービス型喫茶店」の動向から目が離せません。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評