2018年08月31日

「泣きのニッパチ」外食チェーンあの手この手

990151ff-l.jpg

 外食業界では業態により多少の差異はあるものの,売上の季節変動を見るに,好調なのは3月末から4月半ばにかけてのお花見シーズン,年末の忘年会シーズンの2ピークといえるでしょう。逆に昔から「泣きのニッパチ」と言われるくらい,2月と8月は集客の厳しい月となっています。最近では,連休の多い9月も集客が振るわない店舗が多いように感じます。
 もちろん,比較的夏枯れしない焼肉業態や連休に強いリゾート地にある店舗など,それぞれに個別の要因がありますが,概ねこのような傾向にあると見てよいでしょう。
 さて今月は,その「ニッパチ」の8月に外食チェーン各社がどんな販促やマーケティングを行っていたのか,新聞紙上等で目についたものをピックアップしてみました。

 吉野家,ガスト,モスバーガー,KFC,松屋の5ブランドが集結した「ニクレンジャー」なる企画が注目されました(日経MJ:2018/8/29:1P)。もともと吉野家発のこの企画は,新聞紙上で取り上げられる前からTwitter上で話題となっており,8月のコミケではコスプレが登場して盛り上がりを見せるなど,SNSが顧客のシンパシーを高める図式が見えた現象でした。同日の日経MJ同面には,企業のTwitter担当者の座談会が掲載されており,企業のコミュニケーション戦略の潮流を再認識させられました。
 Twitter企画が奏功したのを好材料と見たのか,吉野家HD傘下の「吉野家」と「はなまるうどん」とすかいらーく傘下の「ガスト」は,合同販促キャンペーンを行うことになりました(日経MJ:2018/8/27:13P)。このキャンペーンは,3ブランド共通の「合同定期券」を購入すると1か月間,どの店舗でも割引が受けられるというもの。両社は,客層の異なる3つのブランドが相互に送客することによる新規顧客開拓を期待しています。まさに「呉越同舟」ですね。

 他方,フラチャイズ加盟開発マーケティングということでいえば,「牛角」のレインズ創始者である西山知義氏が代表をされているダイニングイノベーションの記事が目に留まりました(日経MJ:2018/8/31:15P)。新橋に直営1店舗目を開業させた「焼肉ライク」は,カウンターにひとり用の無煙ロースターが設置された焼肉業態で,気軽にひとりで焼肉を食べられるのが特徴です。ここのところ高単価の「ひとり焼肉」業態は注目されていることや,お客様が自分で焼くことで提供時間を早くできるということなど,業態としての将来性は感じるところではあります。
 筆者が注目したのは,10段1/3の取材記事の同面に,5段1/2の西山氏のセミナー告知が掲載されていたことです。企業経営者限定30名のセミナーを全国で4回行うというもの。これは記事連動型広告ともいえるもので,法人のフランチャイズ加盟開発のマーケティングですね。まさに「牛角」が急拡大していったときのベンチャー・リンク社の手法のような印象を受けました。
 西山氏は,フランチャイズ方式をとり,2019年末までに30店,2013年までに300店舗のチェーンに育てる,と方針を語っています。現在,焼鳥「すみれ」を126店舗展開させている西山氏の手腕からして,不可能な数字ではないのかもしれません。夢よもう一度,「焼肉ライク」がこれからどのように発展していくのか,刮目しておきたいと思います。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 23:59| Comment(0) | 時評

2018年07月31日

中食市場の伸展と外食業界のIT化推進

ハンバーガー.jpeg

 日本フードサービス協会の調査によると,2017年の外食産業市場規模は前年比0.8%増の25兆6561億円で6年連続の伸長となりました。1人あたりの外食支出額が増えたことに加えて,訪日客増によるインバウンド需要の増加も寄与したようです(日経朝刊:2018/7/31:2P)。一方,日本惣菜協会によると,2017年の中食市場規模は前年比2.2%増の10兆555億円となり初めて10兆円の大台を突破し,外食市場規模の1/3超となりました(日経朝刊:2018/5/26:6P)。

 中食市場10兆円のうち,2/3がスーパーや総菜専門店,1/3がコンビニ惣菜ということですが,中食市場の伸長はコンビニ惣菜に寄るところが大きいと見ています。夕食を自炊ではなく手軽に惣菜で済ませようという消費者ニーズが高まっている,と見たファストフード業界は,夕食として利用できる満足感のあるメニューの提供を始めています。お好みでパテなどが増やせるマクドナルドの「夜マック」,サンドイッチの長さや具材の量が2倍になるお得なサブウェイの「夜サブ!」,トマトやタマネギをソテーして重量を2倍にしたモスバーガーの「ごちそうチリバーガー」などが,その例と言えるでしょう(日経MJ:2018/7/18:1P)。

 小売と外食の垣根を取り払うグローサラントの導入で,スーパーなどの小売業界は惣菜市場での地位をキープしようとしています。外食業界では,テイクアウト商品を導入して中食需要を取り込もうとしています。スーパー,コンビニ,外食で,伸長している中食市場のパイをどのように取り合っていくのか,今後目が離せません。



 そのような外食業界では,IT導入による運営効率化が進んでします。筆者は個人的には,人や接客の部分をITに置き換えることについては慎重に考えたいと思っていますが,管理に関しては合理化効率化を進めるべきだと思っています。ただし,やみくもにITを導入すればよいのではなく,管理業務の標準化や仕組み化ができてから,ということになるでしょう。それでは,外食業界のIT導入事例を7月の記事からピックアップしてみましょう。

 バーガーキングは,タブレットで商品を注文できる店舗を増やしていく方針です。タブレット上では,具材の追加などのセルフオーダーとその仕上がりイメージが確認できる仕様になっており,注文時のサービス向上につながりそうです(日経MJ:2018/7/27:13P)。
 ロイヤルHDは,食器洗浄業務にロボットを導入します。人間には負荷のかかる中腰での作業をロボットに任せ,人間は接客などの付加価値の高い業務の割合を増やします。まずは傘下の「シズラー新宿三井ビル店」にロボットを導入し,1年間かけて人が関わる作業時間の半減を目指すとしています(日経MJ:2018/7/4:13P)。
 ゼンショーHDは,「すき家」でアマゾンアレクサ(音声認識AI)を使った弁当予約サービスを始めました。昨年11月から試験的に牛丼のみに導入していましたが,本年7月からテイクアウト全製品に対象を広げて対応する予定です(日経MJ:2018/7/4:13P)。
 吉野家HDは,グループ各社の業務システムをクラウド型サービスで統合し,人事,販売などのデータを一元管理します。グループ経営の効率を高めるとともに,商品やサービスの質向上も企図しているようです(日経MJ:2018/7/6:13P)。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 16:39| Comment(0) | 時評

2018年06月30日

外食チェーン出店戦略と業態づくりの転換点

VV9V9A2971_TP_V.jpg

 ここ最近の外食チェーンの話題といえば,人手不足や原料高騰などコストプッシュ関連が多いようです。このような外部環境変化に対する外食チェーンの対応は連日新聞紙上を賑わせていますが,各チェーンの特徴などを6月の記事からピックアップして解説します。

 全国1000店舗超のチェーン展開をしている「すかいらーくグループ」や「ゼンショーHD」は,市場飽和や人手不足によって,現在では年間出店ペースを10店程度に抑制しています。パートタイム雇用も含めて飲食調理関連の有効求人倍率は約3.2倍と,95年統計開始以来の高水準となっており,大量出店に必要な人の確保が難しくなってきています(日経朝刊:2018/6/16:2P)。
 昨年度大量閉店や「いきなりステーキ」へのFC加盟が話題となった「幸楽苑HD」は,2019年3月期の新規出店を10店舗程度に抑える方針です。同期に西日本の不採算店17店の閉鎖も予定しており,店舗数は500店程度になる見込みです。同社の新井田社長は前期32億円の最終赤字となった原因を出店戦略の判断ミスとしており,「経営陣一同,抜本的見直しにより事業を再構築する」と説明しています(日経MJ:2018/6/1:13P)。

 規模の経済性すなわち「スケールメリット」享受にも限界があり,何か歯車が狂って負のスパイラルに陥ると加速度的に業績が悪化するのがチェーン・ビジネスの怖さです。また,既存店の売上落ち込みを新規出店でカバーするのが常態化してしまうと,建設費など初期投資の支払期限と現金商売で売上金が入る時期とのタイムラグにより一時的なキャッシュインが生まれてしまい,巨大な「自転車操業」の図式が出来あがることにもなります。昨今のような厳しい経営環境下においては,収益性確保や内部統制確立など,経営の基礎固めをするのが無難といえるのではないでしょうか。

 求人募集情報大手リクルートジョブズの6/14発表によると,首都圏・東海・関西の三大都市圏におけるパートアルバイト募集時平均時給発表,前年同月より1.8%高い1024円でした。同業大手のパーソナルキャリアによれば,5月の全国のパートアルバイト募集時平均時給は,前年同月より3.6%高い1032円でした(日経朝刊:2018/6/15:20P)。
 中国ネット通販国内第2位の京東集団(JDドットコム)は,従業員のいない無人ロボットレストランを展開するそうです。客はスマホで注文,調理・盛付け・配膳をロボットがするのだそうです。ロボットを活用したレストランは,すでにアリババ集団が中国国内で多店化を進めていますが,完全無人という業態は初めてです。2018年8月には,4000uの敷地面積となる第1号店を開店の予定で,今後はFC方式で出店を加速する方針です(日経朝刊:2018/6/1:11P)。

 最近,グルメ回転ずしの雄「銚子丸」(JASDAQ)や,クリエイトレストランHD傘下の「磯丸水産」もオーダー用にタッチパネルを導入するようになりました。これらの業態は,カウンター内の職人との掛け合いや,民芸風ユニフォームを着たホールスタッフとのコミュニケーションが,いわゆる「ノリ」を演出していたと,筆者は個人的に評価しています。人手不足という現状を鑑みるに,背に腹は代えられないところはあるのでしょうが,業態の付加価値を削ぐことにはならないか,少し気がかりなところです。

(無断掲載,転載を禁じます)

posted by 山岡雄己 at 23:00| Comment(0) | 時評